今年のF1も、残すところはあと1戦、11月23~26日に開催される「アブダビGP」を残すのみとなりました。
それに先立つこと1週間、ちょっと注目のレースがアジアで開催されます。
F1への登竜門、F3の世界最速を争う「マカオGP」です。
その2018年マカオGPには伝説のF1世界王者、ミハイル・シューマッハ氏の息子であるミック・シューマッハが「欧州F3選手権(FIA European Formula 3 Championship)」の年間王者として参戦します。
マカオGPの始まりは1954年、当時はポルトガルの海外領土であった当地で、地元に住むポルトガル人やイギリス人、華僑たちによって行われた草レースでした。
その後、東南アジ有数の大富豪でF1チームのオーナでもあったテディー・イップのテコ入れや日本の自動車メーカーなどの参戦により世界的な市街地レースの一つとして成長。
さらにその後、1983年に国際格式であるF3の導入により、世界各国のF3選手権上位者が参加して行われる「F3世界一決定戦」として名実共に世界有数のレースとなりました。
ちなみにF3導入後の記念すべき第1回大会のチャンピオンは「音速の貴公子(これ古館一郎さんが勝手につけたんですよね?)」アイルトン・セナです。
マカオGPを制したドライバーの中には後にF1で活躍する名レーサーの名前がずらりと並んでいます。
1983年のF3規格導入前のレースには「鉄人」リカルド・パトレーゼの名前があります。
因みに古館一郎氏によると「史上最強のセカンド・ドライバー」とか「二百戦練磨の男」などがあります。
最初のは、ネルソン・ピケやナイジェル・マンセル、やミハイル・シューマッハなどとコンビを組んでいたのでまあ、わかるけど・・・二百戦錬磨・・・???
F3規格導入後のチャンピオンには、先ほども書きましたがアイルトン・セナ、マウリシオ・グージェルミン、デビット・クルサードや、昨年日本人として初めて世界三大レースの一つにもあげられるインディー500の優勝者となった佐藤琢磨の名前もあります。
残念ながら勝利することはなかったものの、参加者中にも後にF1で活躍するドライバーの名前もあります。
ゲルハルト・ベルガ―、ジョニー・ハーバート、鈴木亜久里や、のちのF1チャンピオン、ミカ・ハッキネンなど。
歴代の優勝者の中に、シューマッハの名前が2度記されています。
一度目は1990年、ミハイル・シューマッハ。
2度目はその5年後の1995年、ラルフ・シューマッハです。
ミハイルとラルフはともにF1で活躍した兄弟です。
特にミハイル・シューマッハに関しては、今更説明もいらない伝説のF1チャンピオン。
1991年ジョーダンからF1デビューしその後ベネトン、フェラーリなどで合計7回の世界チャンピオンに輝いたF1史上に燦然とその名を残すドライバーです。
僕が特にマカオGPで印象的だったのはじつはこのミハイル・シューマッハが優勝した1990年のレース。
当時最強と言われていたイギリスF3のチャンピオン ミカ・ハッキネン。
一方ミハイル・シューマッハはドイツF3チャンピオン。
マカオGPでは1日に2回レースを行いトータルタイムで勝利を競います。
第1レースではミカ・ハッキネンが大差で勝利。
第2レース、ミハイル・シューマッハがトップを取るものの、スリップストリームにつけて追いすがるミカ・ハッキネン。
そして最終コーナーに向かうストレート、ハッキネンはシューマッハを抜く必要はありませんでしたが、スリップストリームからシューマッハを抜きにかかろうとしたその瞬間、映像では明らかにブロックを試みている(シューマッハがブレーキを踏んでいるという噂も)シューマッハ。
結果はブレーキを踏みクラッシュを避けたミカ・ハッキネンがスピンを喫しそのままウォールに激突してリタイヤ。
リヤウィングをなくしながらも完走し優勝をさらったシューマッハ。
もし、当時現在のように無線があれば、ミカ・ハッキネンのチームスタッフはミハイル・シューマッハを絶対に抜かせはしなかったでしょう。
そのまま走ってゴールさえしていればミカ・ハッキネンの優勝でしたから。
そしてこの年、一番速かったのは間違いなくミカ・ハッキネンでした。
ぼくは勿論このレース以降、ミカ・ハッキネンのファンになりました。
計算の出来ないこの手の性格、好きなんだなー。
この時の話には前段があって、マカオGPの前にドイツに招かれてレースに出た既にイギリスF3チャンピオンを決めていたハッキネン。
当時ドイツで注目されていてこの後、ドイツF3チャンピオンを決めることになるミハイル・シューマッハに圧勝してるんです。
シューマッハは大きく評価を下げていたので、今となっては、これは邪推でしかありませんが、最後のクラッシュ覚悟のブロック、勝ち目がなかったシューマッハの捨て身の自爆(のはず)だったんだろうなって思います。
クラッシュしいればリザルト(レース結果)は両者共リタイアですから。
何もせずに抜かれていれば、ミカ・ハッキネンの評価だけが上がるわけです。
その後の二人の活躍はご存知の通り。
早いけどなかなかF1チャンピオンになれなかったミカ・ハッキネン(最終的には2度のF1チャンピオンを獲得)と合計7度のF1世界チャンピオンに輝いたミハイル・シューマッハのF1前夜の物語でした。
さて今年のマカオGPにはミハイル・シューマッハ氏の息子、ミック・シューマッハが出場します。
若干19歳。
因みにミハイル・シューマッハ氏がマカオGPで勝ったのは22歳の時。
ミックは実は去年も出場していますが、最速ラップタイムを計測するも、レースでは16位に沈んでいます。
今年も最初こそ大きな活躍はできませんでしたが、シリーズの途中から怒涛の連続優勝を続け、「欧州F3選手権」を獲得しました。
今年はチャンピオンとして臨むミック・シューマッハ。
叔父にあたるラルフ・シューマッハ氏以来、シューマッハによる三度目のタイトル獲得はなるのでしょうか?
今年の欧州F3選手権で序盤に圧倒的な力を見せていた去年の覇者、ダニエル・ティクタムなど強敵は多いけれど、結果はどうなるのか、とても楽しみな週末です?
ミハイル・シューマッハとミカ・ハッキネンの昔の映像とか見ると、レースをしているさなか、コースにゴミ袋とかが飛んできてたりして、変なところで時代を感じてしまったりします…。
しかし二人のこの後のライバルとして戦いは中々見ごたえがありました。
周囲の全てを勝利の為に固めて、絶対に勝てる環境の中で戦う皇帝ミハイル・シューマッハと単純に速いミカ・ハッキネン(基本的にフィンランド人は何に乗っても速いらしいですけど)。
近年のF1には無い見応えのある戦いを見せてくれた二人のF1前夜のような戦いが、今年も“シューマッハ”の周りあるいはまったく想定外のところで見られるといいなあなんて思います。
おしまい